本展では今回を機に制作した静物画の新作を複数展示します。複数の技法が混在する江上の絵は、そこに「何か」が描かれていることはかろうじて分かるのですが、画面をじっと見ていくうちに、その「何か」が像を結んでは再び解体される、ということが繰り返されていきます。鑑賞という行為の中で、絵画の空間の中で視線を彷徨わせることと作者の捉える空間とが、一致しては解けていきます。

今回の新作では、描く対象を舞台のような場として設定し、そこにゆるやかに変化する植物やガラスの様な周りの環境の様子を写し込むモチーフを、次第に増えていく登場人物の様に段階的に持ち込むルールを取り入れることで、静物画の中に時間や複数の拡がりを取り込むことにも挑戦しています。